【小説】私のアイドル
おはようございます。
タクです。
おはようと言いつつもう夕方ですね……。
朝の時間で記事が書き終わらなかったんです。
(今日は研修で通勤時間が短い)
はい、言い訳です…
……閑話休題。
はてなブログでは毎週「今週のお題」という項目があり、そのお題で良い記事を書くとグリーンスターなるものが貰えるそうです。
先日、僕も相方のクロも受験について書いたと思うのですが、実はあれがその「今週のお題」だったんですね。
グリーンスターなるものは手に入りませんでしたが、その日の閲覧数はいつもより伸びていて
ほほう、なるほどなぁ
と思いました。
しかし、今週のお題は「私のアイドル」
………!
確かに僕は°C-uteというアイドルにはまっていて、YouTubeで動画を見まくったり、曲を聴きまくったりしてるんですが、「私のアイドル」
として語るにはまだ恐れ多いなぁと感じる次第で……。
じゃあ好きな子の話とかは??
と訊かれると、確かに自分の中で4年間ほど好きで、自分の中ではアイドル的存在といっても過言……過言でも……過言でもない…。
(恥ずかしいなこれ)
人はいたんですが、それはそれで違う記事でまた語りたいなぁなんて……。
まあぐだぐたしてしまったんですが、今回はお題を元に小説を書いてみようかなと思います。
というかこれからも出来る限り週一のお題で記事を書く際は小説を書いてみようかなと思います。
いつもの記事同様拙い文となりそうですが、とりあえず読んでみてください!
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私は幼い頃から本を読むのが好きだった。
母がいつも私を寝かせる時に絵本を読んでくれたのがきっかけ。
母が仕事の関係忙しくなり、私も少し大きくなったので母の読み聞かせの頻度が少なくなった。
絵本の続きが気になって自分で本を読むようになり、夢中で読み続けていたらどんどん本の世界に吸い込まれ、私はほとんどの時間を読書の時間に費やすようになった。
読めば読むほど色んな言葉を覚えていき、読めば読むほど他の本のことも気になっていった。
そんなことを繰り返すうちに私は誰とも話さなくなり、一日中ずっと本を読むようになった。
でも、ある日気づいた。
私には本しかないことを。
本に夢中になり過ぎて気にもならなかったが、私は本の主人公のような仲良しの友だちも、いつもドキドキさせてくれる恋人も、誰かと何かを成し遂げる青春も何一つ持っていないことに気づいた。
気づいたという言い方は少し違うかもしれない。認めた、と言うべきなのかも。
本を読んでればいいと思っていたのに、それが寂しいことだと認めてしまったのだ。
認めてしまうともうその感情がぐるぐるぐるぐると渦巻き、頭から離れなくなる。
きっかけも本。あまりに素敵な本だったから、何度も何度も読み返した。
読めば読むほどに本の主人公たちに羨望の感情を抱いた。
地味な眼鏡をかけ、教室の隅でじっと本を読んでいる私には到底叶うことのない青春を存分に味わう主人公たちに激しい嫉妬を覚えた。
本の主人公たちに嫉妬を覚えるなんて言ってるから今の状態に至ってるんだと分かってはいた。
もっと本でなく周りを見て、どこかのグループに仲間に入れて貰えば良かったのに、自分には本しかないと気づいた今でも私はそれができないでいる。
高校2年にもなって今さら青春だなんて都合のいい話だ。そう自己完結することしかできなかった。
いつしか本は居場所から逃げ場所へと変わっていった。
今まではキラキラした主人公のキラキラした話を沢山読んでいたけど、今は根暗な主人公のどろどろした話ばかりを読むようになった。
面白いとは思わなかったけど、気は楽だった。
「ねぇ。」
声が聴こえた。
読んでいる本のセリフではない。
でも私は馬鹿だから必死にねぇ。の文字を探した。
「ねぇってば。」
今度ははっきりと聴こえた。
恐る恐る目線をあげる。
「あのさ、今日一緒に帰ってよ。」
クラスの真ん中あたりの席の…確か小林さん。
特別派手な身なりをしているわけではないけど、私のクラスではなぜかとても目立つ存在で、ぶっきらぼうだけど、人気がある人だ。
「あのー。私とですか?」
「今教室にあなたしかいないじゃん。」
「そっ、そうですけど……。」
辺りを見渡す。
放課後人がいなくなるまで本を読んでいるのは日課なはずなのに、何度も確認をした。
だって私に小林さんが話しかけるなんておかしいことだと思うから。
「嫌ならいいんだけど。」
「嫌じゃないです。嫌じゃないですけど…」
「じゃあ帰ろうよ。」
「はっ、はい。」
なんで私なんだろう。
訊きたいけど、訊けない。
あんまり話すのは得意じゃない。
ここで話せるなら友だちの1人や2人とっくにできてる。
「ねぇ、ちょっとお茶しない?」
「えっ。」
「だめ?」
「だっ、大丈夫です。」
「じゃあ行こう」
誰かと寄り道なんて初めてだ。
ドキドキと鼓動が高鳴る。
少しスキップしたい気分だ。
でも、何もなかった。
小林さんはハンバーガーをぱくぱくと食べ、ジュースをゴクゴクと飲んで、スマホをいじって少し寝て、起きてスマホをいじってポテトを食べて、それで寄り道は終わった。
小林さんと何か話すことも、連絡先を交換することもなかった。
小林さんが悪いわけではない。
私が話しにくい雰囲気なのがいけない。
ファーストフード店からの帰り道、小林さんも私も口を開くことなく駅に着いた。
私はちらちらと小林さんを見ていたが、小林さんは私には一瞥もくれず歩いていた。
本当、なんで私なんだろう。
そんな疑問が浮かびっぱなしな私だけど、臆病なので何も訊けない。
「はいっ。」
「えっ?」
小林さんが手に持っているものを私に渡す。
見てみると、ウイスキーボンボンだった。
「あげるよ。今日はありがとね。それじゃっ、私はこっちなんで。」
小林さんはそういうと私に背を向けすたすたと歩いていった。
私は小林さんのその後ろ姿をぼーっと見送った。
ウイスキーボンボンを口に入れる。
苦い。
私にはまだ大人な味。
小林さんはこの味が好きなのだろうか。
だとしたら大人だな。
ゆっくりと噛み、じっくりと味わう。
その苦さがなんだか私を変えてくれる気がした。
それから私と小林さんはいつも通り話すことなく1年を終え、その1年後私たちは高校を卒業し、その後も時は流れ、私は大人になった。
今私は薬品メーカーで営業職の仕事をしている。
本を読む暇もないくらい忙しい日々を過ごしていて、たまに辟易とするけど、でも今の生活を悪くはないと思ってる。
多くはないけど友だちがいて、イケメンじゃないけど優しい彼氏もいて。
人と繋がることに抵抗を感じることも大分減った。
結局今になってもなんで小林さんが私と帰ろうとしたのか、その真意は分からないけれど、ウイスキーボンボンの味だけは忘れられないでいる。
大人になった今でも苦く感じるけれど。
すごいキラキラしてるわけではないけど「私のアイドル」のお話。
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いかがでしたか?
みなさんにとって少しでも面白い作品でしたらよかったなと思います。
次回の更新もお楽しみに。
タクでした。