ハッピーアイスクリーム~自由を望む2人の民~

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Hくんのキノガッサ

 

 

最近ライバロリの動画をよく見る。

 

ライバロリとはポケモン対戦の実況者で、厨ポケ禁止道やリトルバスターズなどいわゆる厨ポケと呼ばれる強いポケモンをさほど強くないポケモンで倒すという動画が有名だ。

 

僕はポケモンルビサファまでやっていた口だ。ポケモンGOも少しだけやっていた。

 

ポケモン実況者のように種族値とか努力値とか個体値とか性格とか細かいところまで考慮してやったことはないし、ダイパ世代以降のポケモンのことはほぼほぼ知らないけれど、ライバロリの動画を毎日見漁っている。

 

ライバロリの動画限らず、ポケモン実況の動画ではキノガッサというポケモンをよく見る。

 

キノガッサとはキノコホウシポケモンで草かくとうタイプポケモンでもある。攻撃力と素早さが高いのが特徴でタネマシンガンやマッハパンチなどの攻撃技で相手に大ダメージを与える一方、キノコの胞子で眠らせる特殊技も使える優秀なポケモンである。

 

僕はこのキノガッサルビサファ時代よく使っていた。僕がルビサファをやっていた時代はキノコの胞子という技はなく、スカイアッパーかマッハパンチで殴るか、メガドレインで相手の体力を奪うかフラッシュで相手の命中率を下げるかして闘っていた。

 

当時の僕からするとキノガッサはスタイリッシュでいいところで使えば強いポケモンだが、どんなポケモンに対しても圧倒的強さを誇るポケモンではなかった。

 

冒頭でルビサファまでとは言ったが、僕はソウルシルバーも実はやっていた。(金銀のリメイクなので実質金銀。ダイパ以降の世代はやっていない。)

ソウルシルバーをやっていた時代は所属していた部活でポケモンが大流行していた。

 

部員の一人B君が3日で全クリしたせいで、流行った期間は短かったが、流行った当初はみんなポケモンをやっていて、帰りにサイゼやマックによってはポケモン対戦をした。

 

自慢じゃないが僕はポケモン対戦で負けることがほぼほぼなかった。昔からやっていて、それなりに強いポケモンを揃えていたからあまり経験のない部員には圧勝だった。こいつには敵わないと負けた部員からもてはやされ、僕はまんざらでもない気持ちの中ポケモン対戦の日々に明け暮れた。しかし、僕と同様に強いポケモンを持った男がいた。

 

Hくんである。

 

Hくんはハーフではないが、ハーフ顔。勉強がすごいできるわけではなかったが、ユーモアがあり、頭の回転の速い男だった。コミュ力があり、話しやすく、スポーツも万能で、テニス部のレギュラーメンバーで女子からも人気のあるカーストの高い男だった。

 

ポケモンなんて強くなくても全然生きていける強い力を持った男だったが、Hくんはポケモンに対しても抜かりはなかった。

 

そして、彼のポケモンの強さたる所以は彼の持つキノガッサにあった。

 

Hくんのキノガッサは僕が持っていたキノガッサとは違い、当時部内で最強の名を欲しいままにしていた

 

圧倒的強さを持っていたのだ。

 

Hくんのキノガッサはキノコの胞子を持っていた。当時キノコの胞子という技を知らなかった僕はキノコの胞子が100%相手を眠らせる技であることを知らなかった。そのため、僕は彼のキノガッサに急造で対策を練るしかなかった。

 

今思えばキノガッサは草かくとうタイプ。僕のポケモンの当時のエースだったカイリュウに対して、強い打点のあるポケモンではなかった。キノガッサに眠らされても、キノガッサ以外のメンツを倒せば、キノガッサはカイリュウに手も足も出ない。眠らされても慌てずに起きるのを待ち、冷静にキノガッサを倒せばよかったのに、僕はカイリュウに寝言を覚えさせ、寝言→空を飛ぶのコンボでキノガッサを倒す策で挑んだ。

 

結果は惨敗。寝言→空を飛ぶのコンボは寝言で空を飛ぶを出した後にカイリュウが目を覚まさないとうまく決まらず、目の覚ますタイミングが悪いカイリュウキノガッサにボコボコにされた。

 

勝負は一度だけ。カイリュウをぼこされた僕はポケモン勝負に敗北した。

 

Hくんには何一つ敵わない学生時代だった。得意の妄想力でさえ、Hくんの方が一枚上手だったと思う。中一の時から好きだった子も、Hくんとの方が仲が良かった。Hくんに今でも劣等感を抱くかと言われればそんなことはないと思うが、それでもHくんに何か一つ勝てるものが欲しかった。

 

だが、ポケモン勝負で負けた僕は、その後Hくんに何一つとして勝つこともないまま学生時代を終えた。

 

それからしばらくしてHくんとは別々の大学に進学した。社会人になって3年も経つ今、僕は彼に会っていない。

 

今の僕が今のHくんに何かで勝っているのかどうかは分からないし、さほど興味はないけれど、あの時Hくんにポケモン勝負で勝っていたら今の僕は少しだけ違った人生を送っていたのではないかと思うことがたまにある。

 

ポケモン勝負程度でと鼻で笑う人もいるだろうが、Hくんのキノガッサに勝つことは当時の僕にとってそれだけ意味のあることだった。

 

Hくんのキノガッサのような難敵は今後の人生で幾度となく現れるだろう。勝たなくても良さそうな相手だからとキノガッサに勝つことを諦めればまた一つわだかまりが生まれる。

 

勝たなくてもおそらく大きなマイナスになることはないだろうけど、僕はHくんのキノガッサに勝てるようになりたい。

 

Hくんのキノガッサのような一見倒せなさそうな敵を華麗に倒せるようになりたい。

 

もしHくんのキノガッサのような敵を倒したのなら、その時はHくんと再び会って酒を飲みたい。

 

Hくんはキノガッサを持っていたこと自体あまり覚えてないかもしれないけど、Hくんのキノガッサは強かったよなぁでも、もう負けないぜって笑いながら、キンキンに冷えたビールをごくりと飲みたい。

 

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